【プレスリリース】買い物かごの「ナッジ」で野菜選択を後押し
スーパーマーケットでの社会実験で効果を検証2026/09/01 【研究成果】
研究成果について、プレスリリースしました。
本研究成果が、日本公衆衛生学会の「日本公衆衛生雑誌」に早期公開されました。
【研究成果の概要】
山形大学Well-Being研究所などの研究グループは、山形県内のスーパーマーケット3店舗を対象に、買い物かごを活用した「ナッジ」※が来店客の野菜購入行動に及ぼす影響を検証しました。
3店舗のうち2店舗を介入店舗、1店舗を対照店舗として、1カ月間の社会実験を実施しました。介入店舗では、買い物かごに野菜を入れる場所を明確化したナッジチラシ(図1A)を設置しました。さらに、そのうち1店舗では、人気野菜70 g分を視覚的に示したナッジポスター(図1B)を野菜売り場に掲示しました。
前年同期と比較した野菜売上高について、介入前後の変化を分析したところ、介入店舗では対照店舗より4.0%ポイント大きな変化がみられました。一方、野菜以外の売上高や総売上高は減少傾向にあったものの、統計学的な有意性は認められませんでした。このことから、本研究で用いたナッジは、買い物客の総支出を増やすことなく野菜購入を促すことが示唆されました。なお、野菜売り場へのナッジポスター設置による追加的な効果は確認されませんでした。
日本人の野菜摂取量は、目標とされる1日350gに達しておらず、日常生活の中で野菜摂取を自然に促す環境づくりが求められています。本研究により、値引きやポイント付与などの経済的な働きかけを行わなくても、買い物かごに小さな工夫を加えることで、来店客の野菜選択を後押しできる可能性が示されました。
※ ナッジ(nudge)とは、「そっと後押しする」「ひじで軽くつつく」という意味の英語で、選択の自由を残しながら、行動をより望ましい方向へ自然に促す工夫のことを指します。
ナッジを実践する際の代表的な考え方の一つに、「EASTフレームワーク」があります。これは、人の行動を促すためには、Easy(簡単にする)、Attractive(魅力的にする)、Social(社会的な要素を取り入れる)、Timely(適切なタイミングで働きかける)という4つの要素が重要であるという考え方です。
本研究では、このEASTフレームワークをもとに、買い物かごに野菜購入量の目安を分かりやすく示すなど、買い物中に自然と野菜を選びやすくなるナッジを取り入れました。

図1.本研究で使用した介入資料
A)買い物かごのチラシに活用したナッジ
・買い物かごの中で野菜を入れる場所を明確化した(Easyナッジ)。
・親しみやすく、目を引くキャラクターを用いた(Attractiveナッジ)。
→11月の実施時期に合わせ、鍋料理を連想させる鍋のキャラクター(Timelyナッジ)と、当該スーパーマーケットで
売上の最も多いトマトのキャラクターを採用した。
B)野菜売り場のポスターに活用したナッジ
・11月の人気野菜を取り上げた(Timely・Socialナッジ)。
・野菜70g分の目安を具体的な野菜の量や写真で分かりやすくした(Easy・Attractiveナッジ)。
【本研究のポイント】
・スーパーマーケットの買い物かごを活用した「ナッジ」が野菜購入を促すかを1カ月間の社会実験で検証。
・買い物かごに野菜を入れる場所を明示したナッジチラシを設置したところ、前年同期と比較した野菜売上高の変化は、対照店舗
より4.0%ポイント高い結果。
・野菜以外の売上高や総売上高は減少傾向にあったものの統計学的有意性は認められず、買い物客の総支出を増やすことなく野菜
選択を後押しできることを示唆。
・買い物かごのチラシの認知度は95%と高く、来店客に情報を届ける場としての買い物かごの有用性を示唆。
論文情報
【論文タイトル】
買い物かごを活用したナッジが野菜購入行動に及ぼす影響:スーパーマーケットにおける準実験研究
【論文著者】
清野 諭1,2, 竹林 正樹3,4, 五領田 小百合1, 横山 友里2, 今田 恒夫1
【所属】
1 山形大学
2 東京都健康長寿医療センター
3 青森大学
4 青森県立保健大学
【雑誌名】
日本公衆衛生雑誌
DOI: 10.11236/jph.26-020
Well-Being研究所ホームページ
