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ビタミンCは抗酸化にとって極めて重要である2021/09/02 【研究成果】


以下の研究成果はFree Radical Biology and Medicine誌(2021年1月付)に掲載されました。

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 不足すると壊血病になることで知られるビタミンCについては、抗酸化効果のあることがよく知られていますが、これまでの知見のほとんどは試験管内での実験結果に基づいています。人をはじめとする霊長類はビタミンCを合成できませんが、実験動物として一般的に用いられるマウスなどのげっ歯類は、グルコースを材料に必要量を合成しています。これまでにもマウスを用いてビタミンCの効果を調べた研究はありますが、もともと必要量を合成しているため、その効果を正確に評価できませんでした。
 私たちの教室では、ビタミンC合成に関わる遺伝子の一つAKR1Aを欠損するため、通常マウスの1割程度しかビタミンCを合成できないマウスについて研究を行っています。このマウスには、骨形成異常と、一部の仔に発育障害が見られますが、最長で1年程度生存します。一方、活性酸素を消去する酵素の一つSOD1を欠損したマウスは、貧血や早期老化の症状はありますが、通常マウス(2年以上生存)と比較して寿命はわずかに短い程度です。ところが、この二系統の遺伝子改変マウスを交配してできた両遺伝子を欠くマウスは、ビタミンCを投与しないと肺の酸化障害が急速に進行して、2週間以上生存することができません。この結果は、ビタミンCが活性酸素を除去し、酸化ストレスから身体を護っていることを明確に示しています。その他にも、ビタミンCの不足が化学物質による肝障害・発癌を増強し、酸化ストレスによる脂肪性肝障害から肝癌に進展する割合を高めることが分かってきました。ビタミンCは水溶性のため1日でほぼ半分を失ってしまいますので、毎日必要量を摂取することが酸化ストレスによる障害から身体を護るために重要なことを、こうした結果が明瞭に示しています。

 参考文献 

Free Radic Biol Med.2021 Jan;162:255-265. doi: 10.1016/j.freeradbiomed.2020.10.023. Epub 2020 Oct 21. Defective biosynthesis of ascorbic acid in Sod1-deficient mice results in lethal damage to lung tissue. Takujiro Homma, Yuji Takeda, Tomoyuki Nakano, Shinya Akatsuka, Daisuke Kinoshita, Toshihiro Kurahashi, Shinichi Saitoh, Ken-Ichi Yamada, Satoshi Miyata, Hironobu Asao, Kaoru Goto, Tetsu Watanabe, Masafumi Watanabe, Shinya Toyokuni, Junichi Fujii